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「BANI」(バニ)と「お役立ち道」(後編)


混沌、理解不能な世界を明確に表す フレームワークであるBANI(バニ)を知る。

後編では、BANI世界の混沌への対処について見ていきます。



前編ではBANIの背景と簡単な意味を共有しました。

BANI


 


BANI世界への対処法

 このような世界の混沌に対する対処として以下を述べています(ジャメイ氏は、「解決策というよりも反応かもしれない」と述べていますが、ここでは、この「反応」を「対処」として考えます)。



BANI世界への対処



◆Brittle(脆い)に対しては、「レジリエンスと余裕」

・レジリエンス:一般に弾力性や回復力とされます。システムが困難やストレスに直面した時に迅速に回復する力。
・余裕:ここでの「余裕(slack)」とは、システムやプロセスにおける「余裕」や「たるみ」を意味していると考えられます。これは、システムが過剰な圧力や負荷に対応できるようにするための追加の容量やリソースによって、緊急事態に対処できる時間的・物理的余裕のことと言えます。(例:過密すぎるスケジュールや過度に短い期限等に対して余裕を持たせる環境にすることなど)


Anxious(不安)に対しては、「共感(力)とマインドフルネス」

・共感(力): 壊れたり混乱したシステムが人間にストレス等の悪影響を及ぼすことを認識し、理解できること。その上で、自他に対して親切で寛容であろうとする意志。
・マインドフルネス:一般に、「今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく積極的な意識を向けること」と言われています。このような状態を維持できるスキルが高い人は、日常的な不安などの心理的な苦痛のレベルが低いことが示されています。


Non-Linear(非線形)に対しては、「文脈や状況理解と柔軟性、即興性」

・文脈や状況の理解:物事が直線的に進まず、予測不可能な変化が起こるような状況に対処するには、まず問題が発生している文脈や状況を正しく理解することが重要。
・柔軟性:その上で、状況の変化に応じて方針を柔軟に変更していく姿勢が求められることを示唆していると考えられます。
・即興性:予期せぬ変化や展開に素早く適応する能力。プレッシャーの中で創造的であること。予め決められた選択だけに制限されないことを必要とします。


Incomprehensible(理解不能)に対しては、「透明性と直感(力)」


・透明性:一般に、情報やプロセス、状態などが明確で第三者にもはっきり分かるようになっていること
・直感(力):隠れたつながりを認識する力に耳を傾けること。明確なデータや証拠がなくても、経験や蓄積された知識に基づいて、重要な洞察を得ることができる力と言えます。
「現状認識から何が問題なのか、何をすべきなのかはっきりわからないときに直感に頼ることは、時として成功、あるいは生存への唯一の道となりえる」と主張しています。


出典:以下のサイトを参考に、ジェックにて作成。 Jamais Cascio, 「Human Responses to a BANI World 」, https://ageofbani.com/2023/01/human-responses-to-a-bani-world/ ,2023.1.25

対処内容について原著に直接説明がないものは補足した。 Jamais Cascio, 「Facing the Age of Chaos」, https://medium.com/@cascio/facing-the-age-of-chaos-b00687b1f51d , 2020.4.30、 Jamais Cascio, 「Human Responses to a BANI World 」, https://ageofbani.com/2023/01/human-responses-to-a-bani-world/ ,2023.1.25




お役立ち道による対処の一例

 ジャメイ氏は、「BANI世界のカオスに耐えるために何ができるかと聞かれたら、レジリエンス、共感力、即興性、直感力といった人間的な要素や行動に注目する(Jamais Cascio,2023)。」と述べています。
 そこで、ここに出てきた要素に着目して、お役立ち道との関連を考えてみます。


お役立ち道とは

  「お役立ち道」って何? 当サイトの名前でもある「お役立ち道」。自分らしく “はたらく” を謳歌するための「お役立ち道」とは何かをご紹介します。 お役立ち道ねっと


 
・「メタ認知による行動理論の可視化」
自分の行動理論をメタ認知し、可視化することによって、過度に悲観的な捉え方をしていないかを検討し、予期せぬ衝撃にも立ち向かえる柔軟な捉え方を選択しやすくします。


・「お役立ちの意思*」は、相手やその相手を取り巻く環境を含めた広い視点の獲得につながります。 *誰もが持っている「誰かの・何かの役に立ちたい」という気持ちや意思


・「美点凝視」は共感(相手の考えや感情の理解と感情の共有)と自他への親切・寛容につながります。


・「メタ認知による行動理論の可視化」は「ポジティブ感情」の喚起と、選択・思考の幅の拡張につながります。

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・「お役立ちビジョン* とその実現に向けた日々の心技体(考え方・スキル・行動習慣)の錬磨が素早く柔軟な選択と行動を生みだします。
*自分の役立ち方を具体化したビジョン


・「お役立ちビジョン」とその実現に向けて蓄積された経験と知識が微小なシグナルや違和感などへの洞察を深めます。


・「お役立ちの意思」が直観力の発揮につながります。



 

出典:出典:以下のサイトを参考に、ジェックにて作成。 Jamais Cascio, 「Human Responses to a BANI World 」, https://ageofbani.com/2023/01/human-responses-to-a-bani-world/ ,2023.1.25
参考文献:Fredrickson, B. L., & Cohn, M. A. (2008). Positive emotions. Handbook of emotions, 3, 777-796.


このように、お役立ち道の考え方は「BANI世界の混沌」への対処にお役に立てるのではないかと考えています。



  学術ワード お役立ち道ねっと