第6話:「挑戦の価値観」を育てる/いま、実現するお役立ち道経営
お役立ち道の文化をつくるためには、「挑戦の価値観」「協調の価値観」「お役立ちの価値観」を高めることが必要です。
今回は「挑戦の価値観」を高めるためのヒントについてお話します。
挑戦の価値観:あらゆる可能性にチャレンジしようとする価値観
当社が提供する組織文化診断(株式会社ジェックのサイトに移ります)では企業全体又は特定の部門の組織文化を可視化することができます。
その診断結果で「挑戦の価値観が低い」という結果が出る企業には特徴があります。それは、非常に強い商品・サービスを持っている、比較的歴史の長い企業です。
このような企業は、商品・サービスの開発に果敢にチャレンジし、それを一生懸命世の中に広めてきた歴史があり、当初は非常に高い挑戦の価値観を持っていたはずです。しかし、徐々に商品・サービスが世の中に浸透し、ブランドとなり、安定して売れるようになってくる。すると、その商品・サービスをもっとお客様に使っていただこうと、お客様のニーズをキャッチして様々な改善を施そうとする。一見挑戦しているように見えますが、あくまで「今の商品」「今のサービス」を中心に物事を考えるので、思い切った変化を起こす行動は起こしません。
正に、かつてハーバード・ビジネススクールのクリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」に陥っている企業です。このような状況に陥ると、業績が徐々に下がっていることは認識していても、これまでの行動パターンから脱することができなくなり、挑戦の価値観が高まらないのです。
では、どうすれば挑戦の価値観が高まるのでしょうか。非常に難しい課題ではありますが、代表的なヒントをお伝えします。
① 「お役立ち」に裏付けされたチャレンジングなビジョン
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2016年に「2020年度に売上高3兆円を目指す」という経営計画を立てました。2016年の売上が1兆7864億でしたので、5年間で売上高を約2倍に増やすということです。これは非常に高いチャレンジです。
しかし、「これって、ただ儲けたいだけじゃないの?」と社員が感じてしまっては、挑戦の価値観は高まりません。ファーストリテイリングの企業理念は「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」であり、自分達の服で世界を変えていこうという高い意識を持っています。また、CSRのステートメントは「世界をより良い方向に変えていく」であり、世界の様々な人々い良い服を着てもらい、豊かで幸せになって欲しいという想いが込められています。
このような、「世の中へのお役立ち」に裏打ちされた高いチャレンジは、社員の心に火をつけ、ワクワク感が高まって挑戦の価値観を高めることにつながります。
② 一人ひとりがお役立ちの伝道者になる
先程のファーストリテイリングのように、「世の中の役に立ちたい」という想いのこもった理念を掲げている企業は多く存在します。
しかし、社員に浸透しているかどうかは企業によって差があります。浸透している企業の特徴としては、社員一人ひとりが理念に関することを口にしているということです。例えば、商談の場でお客様に対して「当社の理念は・・」と自分の言葉で説明をしているということです。また、社内の会議やミーティングでもしばしば理念や信条の話が出てきます。素晴らしいサービスの提供で定評のあるホテルグループのリッツ・カールトンでは、自社のクレド(信条)について定期的にミーティングを開いていることが知られています。
自分の口に出して話すと「どうすれば、それを実現できるのだろうか?」と常に考えることになります。考えながら仕事をすれば「このままで良いのか?」と問題意識を持つことになり、思い切った挑戦に向けた行動を取る可能性が高まります。結果的に、挑戦の価値観につながります。
③ 業績に対する正しい考え方を持つ
ジェックでは「業績=お役立ちの量」という考え方を持っています。つまり、お客様から「役に立つ」と認識していただいたからこそ選ばれ、お金を払っていただける。その結果業績が高まるということです。裏を返せば、業績が上がっていないということは、「役に立たない」と感じるお客様が多く、選ばれる状況になっていないということです。
この感覚がないと、「下がった業績を取り戻す」という発想で、今までのやり方にドライブをかけるだけになります。これは挑戦ではなく、一生懸命これまで同様の安定的な行動を取っているということです。「選ばれるためには、何かを変えないといけない」と危機感を持ち、思い切って新たな動きにチャレンジして初めて「新たなお役立ち」が生み出され、選ばれるようになります。
「今のお役立ちでは、選ばれなくなる」と危機感を共有することができてこそ、挑戦の価値観が高まるのです。
ここで紹介したものは一部に過ぎません。挑戦の価値観を高めるためには、その企業様に合わせた手法を取ることが必要です。手法を誤ると、やらされ意識が強まったり、不満が蔓延して、逆に挑戦の価値観を引き下げてしまうこともあります。
次回は、協調の価値観についてお話します。
「世の中の役に立ちたい」「お客様の役に立ちたい」と本気で考え、仕事のレベルを高めていくことを「お役立ち道の仕事ぶり」と呼んでいます。
そして、社員同士が手を取り合って様々なことにチャレンジし、よりお役に立てる仕事を創り出していく経営を「お役立ち道経営」と呼んでいます。
このブログでは、社員一人ひとりがお役立ち道の仕事を極め、自分らしくやりがいを持って仕事をする企業をつくるためにはどうすればよいかを考えていきます。
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(つづく)