バーンアウトを乗り越える!変化の時代の持続可能な働き方
不確実性が日常化した現代。心の健康を守りつつ、変化を楽しむためのワーク・エンゲイジメントと「お役立ち道のサイクル」に注目します。
バーンアウト(燃え尽き症候群)は時代の変化が招く
現在、私たちは、急激な変化の時代に生きています。昨今では、このような状況をBANI(バニ)と呼んでいます。
BANIとは、Brittle(脆い)、 Anxious(不安)、Nonlinear(非線形)、 Incomprehensible(理解不能)の頭文字を取った言葉で、この時代の特徴を象徴しています。
こうした変化や不確実性は、私たちの健康とも無縁ではありません。
実際に、「アクサ マインドヘルスに関する調査2024」によると、世界的に「心の健康」の状態は悪化していることが明らかになっています。その中で、日本は残念ながら調査対象の16カ国中、日本が最下位という結果でした。
世界的に「心の健康」の状況は悪化の傾向 日本は16カ国中、最下位
●各国比較マインドヘルス・インデックスによると、全体的に「不調」の割合が増加していることが明らかになった。
●日本は、半数以上が「やや不調」(35%)「不調」(22%)と回答している。
この状況の中、心や体が疲れていても、無理を重ねて働き続ける方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そのよう頑張りすぎは注意が必要です。無理を続けると「バーンアウト」と呼ばれる燃え尽き症候群に陥るリスクが高まります。私たち人間はAIとは異なり、働ける時間や肉体、精神力には限界があります。その限界を超えると、心身のバランスを崩してしまう可能性があります。
つまり、肉体と精神の限界を超えると、「バーンアウト」と言われる、「燃え尽き症候群」に陥ってしまう懸念もあるのです。
バーンアウトとは
バーンアウトとは、極度の身体的疲労と感情の枯渇を示す症候群といわれます。
バーンアウトは、以下の3つの因子で定義され、①~③の順に出現し、進行するといわれています(Leiter & Maslach, 1988)※。
① 情緒的消耗感:仕事を通じて心のエネルギーが出尽くし消耗した状態
② 脱人格化:他者に対する無情で非人間的な対応
③ 個人的達成感の低下:成果の急激な落ち込みとそれに伴う有能感や達成感の低下
※「脱人格化→個人的達成感の減退→情緒的消耗感」の順で進行するとする主張もある(Golembiewski et al., 1983)。
このようになると、お役立ちどころではありませんね。
では、私たちはどのように持続可能な働き方をすればよいのでしょう?
バーンアウトと反対なのが、ワーク・エンゲイジメントです。
「ワーク・エンゲイジメント」とは、仕事に対するポジティブな感情を持ち、充実感を感じながら取り組む状態を指しています(Schaufeli et al.,2002)。
具体的には、以下の3つの要素が含まるといわれています。
活力: 仕事に対してエネルギーが満ちており、困難な課題にも前向きに取り組むことができる状態です。ストレスを感じにくく、仕事を楽しむことができます。
熱意: 自分の業務に強い関心を持ち、意味を見出している状態です。新しいアイデアや改善策を考えたり、業務に対して積極的に取り組む姿勢が見られます。
没頭: 仕事に夢中になり、時間が経つのを忘れるような状態です。この状態では、仕事の効率や質が向上し、充実感を得ることができます。
このように、ワーク・エンゲイジメントは「仕事を楽しみ、充実感を感じながら取り組むことができる状態」と言えます。このような状態が長く続けば、持続可能なお役立ちができそうですね。
これまでにご紹介した「バーンアウト」と、「ワーク・エンゲイジメント」の他に、「ワーカホリズム」という状態、リラックスという状態があります。
ワーカホリズムは、過度に一生懸命に脅迫的に働く傾向の事を指します。このような働き方も、持続可能なお役立ちからは遠いものです。
さらに、より詳しくご紹介したいのがこちらの図です。
「仕事の資源」と「個人の資源」を増やすことで、ワーク・エンゲイジメントが高まります。それによって、図にあるようなポジティブな結果が生まれるといわれています。
このようなポジティブな結果から、自発性の高まった人が、職場環境の改善を提案し、さらに「資源」が増加していくなど、「資源とワーク・エンゲイジメントとの獲得のスパイラル」があることが指摘されています。
では、このようなポジティブな結果をもたらす原点である「仕事の資源」と「個人の資源」を増やすためにはどうすればよいのでしょうか?
私たちは、「お役立ち道のサイクル」を回すことが、その鍵であると考えています。具体的には、過労や休息不足に注意しながら、チーム全体で互いの心身の健康に配慮し、支え合いつつ、それぞれが仕事を楽しむ環境をつくることです。このサイクルを通じて、自然と「仕事の資源」と「個人の資源」が高まり、ワーク・エンゲイジメントも向上します。
結果として、働く喜びが増し、私たちが目指す「持続可能な働き方」が実現できるのです。
お役立ち道のサイクル
[参考文献]
・Golembiewski, R. T., Munzenrider, R., & Carter, D. (1983). Phases of progressive burnout and their work site covariants. Journal of Applied Behavioral Science, 134, 461-482.
・Leiter, M.P., & Maslach, C.(1988) The impact of interpersonal environment on burnout and organizational commitment. Journal of Organizational Behavior, 2, 297-308.
・Maslach, C. 1976. Burned-out. Human Behabior, 5(9), 16-22.