
2年目社員が急に伸び悩むのはなぜか―「理想と現実のギャップ」を成長の種に変えるために
経験を積み始めた頃、メンバーの様子に変化を感じることはないでしょうか。
挑戦の減少、期待の変化への戸惑い、将来への不安。
こうした要因が重なることで、意欲が停滞することがあります。
本コラムでは、2年目社員に起きやすい変化の構造と、自発的な行動を引き出すポイントを整理します。
2年目の春、あえて2年目社員に光を当てる
4月は新しい門出の季節。世間の関心が新入社員に集まるのは自然なことです。
しかし、現場のマネジャーがひそかに直面しやすいのは、実は「2年目社員の静かな変化(伸び悩み)」ではないでしょうか。
本稿では、入社から1年を乗り切ったことでつい見落とされがちな彼らに、光を当ててみたいと思います。
2年目の方々にとっての4月は、手放しのお祝いムードではいられない事情があります。
後輩を迎え、プロとしての自覚を強く求められる一方で、この一年間で積み重なった様々な葛藤が重圧となり、密かに歩みを鈍らせていることがあるからです。
入社前の期待と現実のギャップに悩む「リアリティ・ショック」は、一般的に入社1年目の課題とされがちです。
しかし組織心理学などの視点から見ると、2年目にはまた「1年目とは別の性質を持った重圧」が訪れると言われているのです。

たとえば、目の前の業務には慣れたものの、新しい挑戦が減ることでモチベーションが停滞する「踊り場(プラトー)」の時期に入ったり、「教えられる新人」から「自ら成果を出す存在」へと周囲からの期待が変わることに戸惑ったりすることがそれに当たります。
さらに近年では、「今の職場は心理的安全性も高くて居心地がいいけれど、この単調な日々の延長線上で、自分は社外でも通用するプロになれるのだろうか」というような「成長不安」を抱く若手層の存在も指摘されています。
こうした2年目特有の「静かな停滞感」は、放置すれば離職や心の不調を招くリスクをはらんでいます。
しかし、組織としての温かい伴走があれば、単なる消耗ではなく、本格的なプロフェッショナルへ脱皮するための重要な転換点になるはずです。
「個人の資質」ではなく「関係性の課題」として捉え直す
私たちは、若手のリアリティ・ショックを「近頃の若手は打たれ弱い」「もっとタフになってほしい」といった個人の資質の問題として片付けがちです。
しかし少し視点を変えて、これを組織側の「関係性のデザイン」の課題として捉え直してみてはどうでしょうか。

人が内発的に(自ら進んで)動くためには、
- 「自分ならできる」という『有能感』
- 「自分で決めている」という『自律性』
- 「周囲と親密で安心できる結びつきがある」という『関係性』
の三つの欲求が満たされる必要がある、という心理学の理論があります(自己決定理論)。
このうちの『関係性』は、「ここに自分の居場所がある」という帰属感(ビロンギング)とも深く結びついています。
つまり、若手本人が無意識に求めている「つながりや安心感」と、組織がマネジメントとして設計すべき「誰もが安心して活躍できる居場所づくり(DEIBの基盤)」は、実は地続きの話なのです。
これらを踏まえれば、2年目の伸び悩みや戸惑いに対する支援は、「若手自身の気合」や「現場の感情論」に頼るものではありません。
誰が、どのように若手メンバーの貢献を認め、安心できる結びつきを提供するのか。これは「関係性をいかに意図的にデザインしていくか」という、組織としての工夫のしどころでもあります。
2年目という時期は、任される仕事が増える一方で、まだプロとしての自信(有能感)を固めきれず、チーム内での自分の位置づけに揺らぎを感じやすい繊細な時期です。
その不安定な状態で「もっと主体的に動いて成果を出せ」と背中を強く押されることが、かえって彼らの意欲を削いでしまうリスクがあることは、ぜひ心に留めておきたいポイントです。
若手の「違和感」を組織の力に変える
業種や組織の特性にもよりますが、入社2年目ともなれば、プロとしての成果をシビアに求められる場面も増えてきます。
ビジネスである以上、それ自体は当然のことですよね。しかし、プレッシャーが高まる時期だからこそ、先ほど述べた「ここにいていいんだという安心感(帰属感)」への配慮が欠かせません。
「自分はこのチームの大切な一員なのだ」と実感できてはじめて、若手メンバーは不平不満を溜め込むのではなく、組織に対する前向きで健全な「違和感」を口にすることができるからです。
若手メンバーが「なぜうちはこういうやり方なんですか?」と職場の慣習に首を傾げるその「違和感」。
それは単なる未熟さゆえのワガママや適応不良ではありません。むしろ組織をアップデートするための、とても貴重な「新しい視点」なのです。
入社直後の今だからこそ見える風景があります。同時に、10年経験したからこそ見える風景もあるでしょう。
組織全体をよくするという意味では、2年目社員の新鮮な違和感と、ベテランの豊かな経験知とが掛け合わさって、はじめて良い組織改善が生まれます。
若手との価値観のギャップは、摩擦として避けるのではなく、組織を見直す絶好のチャンスとして捉えたいですね。
違和感の「出所」を対話で紐解く
ただし、ここで一つ大切な注意点があります。彼らが発する違和感のすべてが、即座に組織改善の材料になるわけではないということです。
まずはマネジャーが、その違和感の「出所」に寄り添ってみてください。
「単にまだ仕事に慣れていないからこそ戸惑っている部分」と「本当に組織の仕組みやルールが古くて摩擦が起きている部分」が、本人の中で整理できていないことが多いからです。
現実には、この両者が複雑に絡み合っていることも多いでしょう。
ですから、「それは君の努力不足だ」「いや、会社が悪いんだ」と白黒つけるように区別するのではなく、「どうしてそう感じたの?」と対話を通じて一緒に見極め、紐解いていく姿勢が大切です。その丁寧な深掘りからこそ、違和感は有効なシグナルへと変わっていきます。
視点をずらし、成果の「前段階」を承認する
違和感に寄り添いながら、日常的にマネジャーの皆さんに試していただきたい実践があります。それは「部下を見る自分の視点(問い)」をほんの少し変えてみることです。
「あのメンバーは(まだ)何ができないのか」、あるいは「何ができたのか(成果)」という目線から、「今日、あのメンバーは『何に向けて動いたのか(プロセスや行動)』」へと見方をずらしてみてください。
ある若手社員は、朝のミーティング前に毎回ホワイトボードを拭いていました。
誰も頼んでおらず、評価にも直結しない仕事です。
ある日、上司がそれに気づき一言声をかけました。
「いつも綺麗にしてくれてありがとね。助かってるよ」。
たったそれだけのことで、その人の表情やモチベーションは確かに変わったそうです。
目に見える「成果」ではなく、その手前にある「自発的な行動」を承認されたからです。
会議の準備での細かな配慮、周囲を和ませる何気ないひと言。
これらを「きちんとした成果」になる前の、小さな大切な行動として確実に拾い上げ、承認すること。
そうした日々の関係性づくりが、「次もまた自分から動いてみよう」という彼らの確かな自信(有能感)へと繋がっていくはずです。
共に「揺らぎ」を歩む伴走者として
2年目社員が経験するリアリティ・ショックや停滞感は、決して単なる後ろ向きなものではありません。
「もっと役に立ちたい」「プロとして成長したい」という前向きな思いがあるからこそ生じる葛藤であり、組織の未来に向けた大切なシグナルでもあります。
「今のあなたにしか見えていない『違和感』はないかな?」
そう問いかけ、彼らの気づきを組織改善のヒントとして歓迎するマネジャーの姿勢は、単なる「管理」を超えたものです。相手の苦悩をともに引き受けるその構えそのものが、若手の孤独を和らげ、自律的なプロフェッショナルへと育つための豊かな土壌をつくります。
明日からのマネジメントにおいて、ぜひ次の二つの問いを現場に持ち帰ってみてください。
「今週、チームのメンバーが自分から動いた小さな瞬間はありましたか?」
そして、もう一つ。
「ご自身が2年目で壁にぶつかっていたとき、誰のどんな言葉や態度が支えになったでしょうか?」
2年目のメンバーの視点を組織の成長エンジンへと見立てる温かな「余白」を、日々のマネジメントに組み込んでいただければ嬉しく思います。
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▶ビロンギング~誰もが自然とつながれる職場づくりの実践~
「ここに居ていい」と思える職場のつくりかた。
▶参考文献
本記事は、以下の研究・理論を背景として構成されています。
江口健二郎 (2011) 「キャリア・プラトー現象に関する研究」『経営戦略研究』5, pp.109-122
山田直人・水口奈津子・本杉健・山岸建太郎 (2010) 「企業における役割転換の促進要因と転換内容に関する研究 ―トランジション・デザイン・モデルの提案」人材育成学会 第8回年次大会 発表論文
リクルートワークス研究所 (2024) 「『ゆるい職場』と若手の研究」プロジェクトサイト (2026年4月6日参照)
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985), Intrinsic motivation and self-determination in human behavior, Plenum Press

















