
「キャリア自律」と「個の確立」/お役立ち道に関する学術的な補足5/5
このシリーズは、以下の記事に出てくる言葉や学術的背景について、詳しくご紹介します。
働く人を取り巻く環境が変化し続けていく中、自らの意思で自分のキャリア形成に主体的に関与することが求められるようになってきています。そのような中でいわれてきた考え方が「キャリア自律」です。
今回は、前回ご紹介した「個の確立」と、「キャリア自律」の関係について、考察していきます。
※引用元や参考文献は、各[*注釈番号]と、記事下の「参考文献・注記」記載内容を照らし合わせてご確認ください。
キャリア自律とは
まず、「個の確立[*1]」とは何か、再度ご紹介します。
個の確立
理念を腹におとし、仕事における「自分自身のお役立ち意識をベースにした使命感」を持って、「自分はこのことでは誰にも負けない。このことでこれだけの貢献ができる」ことを証明するだけの基本的考え方とスキルが確立されている人のこと
ジェック(2006),「『需要創造型経営への変革』のご提言 CPM経営のご紹介」,
2006年6月改訂版
そして、「キャリア自律」(Career Self-Reliance)は、米国に拠点を置くNPOのキャリア・アクション・センター(Career Action Center:CAC、2002年解散)が提唱した考え方です[*2]。
キャリア自律(Career Self-Reliance)
目まぐるしく変化する環境の中で、自らキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組む、生涯にわたるコミットメント
堀内泰利・岡田昌毅(2009)「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」,
産業・組織心理学研究, 23(1), 15-28
以上の定義から、「個の確立」と共通しているのは、自らのキャリアや成長に対する自主性と持続的な学びへのコミットメントといえます。
キャリア自律を実践できる人材
そして、花田(2001)は、キャリアを自律的に形成できる人材を以下のように挙げています[*3]。
キャリアを自律的に形成できる人材
①価値観:自分のキャリア設計やライフプランに関して自分なりの価値観を有している人材
②自己動機付け:キャリア形成に関し、継続的に自分をモチベートし、自己のキャリアを形成し続ける力をもった人材
③主体性:いくつかの選択肢の中から、組織からの方向性や指示を待つことなく、自分の判断で自己のキャリアやオプションを主体的に選択できる人材
④幅広い視野、Integrity*:組織の名前や組織内の肩書きがなくても、組織外に出ても通じる力を持っているか、持とうと努力している人材
Integrity:個人の責任において、社会的な正しさを組織の論理に優先させる強い信念。より広い視野で、自分の状況を周りとの関係性で調整でき、なおかつその状況の中で行動をとることのできる人材[*3]。
⑤状況コントロール力、実践力、構想力:キャリアチャンスを自分の土俵で、再構築できる人材
花田光世(2001)
「キャリアコンピテンシーをベースとしたキャリア・デザイン論の展開
─キャリア自律の実践とそのサポートメカニズムの構築をめざして」
CRL Research Monograph No.1
以上の定義から、「キャリアを自律的に形成できる人材」と「個の確立がされた人」に共通しているのは以下のような点といえます。
これらの特徴は、個人が自身のキャリアと成長を自律的にコントロールし、組織や社会に貢献する能力を示しています。
「キャリアを自律的に形成できる人材」と「『個の確立』がされた人」に共通していること
以下のように整理をしました。
要素 | キャリアを自律的に形成できる人材 | 「個の確立」がされた人 |
|---|---|---|
① 価値観 | 自分のキャリア設計やライフプランに関して自分なりの価値観を有している | 理念と使命を持つ人は、自分のキャリア設計に関して自分なりの価値観を有している |
② 自己動機付け | キャリア形成に関し、継続的に自分をモチベートし、自己のキャリアを形成し続ける力をもつ | 理念と使命を持つ人は、それを源泉として継続的に自分をモチベートし、自己のキャリアを形成し続ける力をもつ |
③ 主体性 | いくつかの選択肢の中から、組織からの方向性や指示を待つことなく、自分の判断で自己のキャリアやオプションを主体的に選択できる | 理念と使命を持つ人は、それを基準に自らの判断で自己のキャリアやオプションを主体的に選択できる |
④ 幅広い視野、Integrity |
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⑤ 状況コントロール力、実践力、構想力 | キャリアチャンスを自分の土俵で、再構築できる人材 | 「個の確立」がされている人は、まさに、キャリアチャンスを自分の土俵で、再構築できる人材 |
※表は株式会社ジェックが作成
まとめ
以上、5回に渡り、お役立ち道に関する学術的な補足をお届けしました。
「誰かの何かの役に立ちたい、より良い社会を創りたい」という想いは、人の重要なモチベーションの一つです。
さらに、「役立ち続ける」ために、「お役立ちの精神と技量を究め続けること」が必要です。これを「お役立ち道」と言います。
このような「個が確立」された組織のメンバーを増やし、メンバーのみならず組織としても、「個の確立」を目指す必要があります。組織における「個の確立」とは、「理念に基づいた、『オンリーワン』企業で在り続ける事[*1]」で、それをベースにより良い社会づくりを追究し続ける経営が「お役立ち道経営」です。
当シリーズでご紹介した学術的な背景も活かしながら、「個が確立されたお役立ち道を歩むメンバー」と共に「個が確立された組織としてのお役立ち道経営」を実践しましょう。
参考文献・引用
[*1]引用:ジェック(2006),「『需要創造型経営への変革』のご提言 CPM経営のご紹介」, 2006年6月改訂版
[*2]堀内泰利・岡田昌毅(2009)「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」, 産業・組織心理学研究, 23(1), 15-28
[*3] 花田光世(2001)「キャリアコンピテンシーをベースとしたキャリア・デザイン論の展開─キャリア自律の実践とそのサポートメカニズムの構築をめざして」 CRL Research Monograph No.1
👓 当シリーズのベースとなる記事
📖「お役立ち道に関する学術的な補足」記事一覧

















