お役立ち道と社会的共通資本
「社会的共通資本」を皆で維持することで豊かな社会につながりますね。「お役立ち道」との共通点がありそうですね。
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近年は、利益だけを追い求める企業活動が、地球温暖化など深刻な環境問題や、格差を生み出していることが言われています。
また、新型コロナウイルス感染症が蔓延したことで、医療や教育など、社会が機能する上で本当にさらに必要なものが明らかになりました。
そのような中で、注目されているのが「社会的共通資本」です。
2021年には、経団連会長、住友化学の会長である十倉雅和氏が会長講演の中で取り上げています。
「社会的共通資本」は、ノーベル経済学賞にもっとも近い日本人とされた経済学者である、故宇沢弘文氏(1928-2014)生年月日確認済みによって提唱された考え方。「SDGsの基盤、原点」とも言われています。
簡単に言えば、
1.概念
「誰にとっても等しく大事なもの」を「社会にとっての共通の財産」*1
として大切にしよう、ということです。
経済学の概念 *2「SDGsの基盤、原点」*3 とも言われています。
*1 「―対談―子どもを粗末にしない国にしよう~社会的共通資本の視点~小林登×宇沢弘文」, チャイルド・リサーチ・ネット(CRN), https://www.crn.or.jp/LIBRARY/EVENT/EVENT11/TAIDAN02.HTM,2005年11月22日
*2 Thorstein Bunde Veblen(ソースティン・ヴェブレン,1857- 1929,米経済学者・社会学者)が呈示し、宇沢弘文(1928‐2014,日本の経済学者)が具体的な形で表現した経済学の概念。
*3「17のゴールを有機的につなぐ理論が社会的共通資本」占部まり氏, 「 京都大学 社会的共通資本と未来寄附研究部門「2022年7月23日京都大学「社会的共通資本と未来」寄附研究部門創設記念シンポジウム①(オープニングトーク、基調講演)」https://www.youtube.com/watch?v=B8XZyM1ASgA,小松弘明,「今年を振り返って ~宇沢弘文とSDGs~」琴浦町第4代町長のコラム, https://www.town.kotoura.tottori.jp/docs/2019122500020/, 2019年12月26日
2.定義
「社会的共通資本は、1つの国ないし特定の地域が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境、社会的装置を意味する。」*4 とされています。
*4 宇沢弘文(2015)『宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理』
日本経済新聞出版本部, P.45
「社会的共通資本」は、「誰にとっても等しく大事なもの」と位置づけることで、市場原理主義による支配でもなく、官僚的支配でもなく、皆で守り、持続的な維持をしていくことで「ゆたかな社会」を創ることを目指しています。
*1 宇沢弘文(2014)『経済と人間の旅』日経BPマーケティング(日本経済新聞出版), P. 244
*2 「市場場自体もまた(社会的共通資本の中の)制度資本とみなされる。『宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理』日本経済新聞出版本部, P. 53 ◆図の出典:NHKクローズアップ現代 「人間のための経済学宇沢弘文 格差貧困社会への処方箋」 2014.10.30放送 https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3574/index.html
「社会的共通資本」はSDGsの「ウェデングケーキモデル」と似ているイメージです。SDGsウェディングケーキモデルとは「SDGsの概念」を表す構造モデルです。
図の土台部分が「社会的共通資本」。豊かな生活には欠かせないものとして、みんなで大切にするもの。「市場」もその「大切なもの」に入っています。
このような「社会的共通資本のネットワーク」の土台の上で、市場の活動が営まれる」というイメージです。
SDGsウエディングケーキ。上から「経済圏(ECONOMY)」「社会圏(SOCIETY)」「生物圏(BIOSPHERE)」の順番に重なっている(出展=Stockholm Resilience Centre)
では、社会的共通資本の中身をもう少し詳しく見てみましょう。
社会的共通資本は、このように、「自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本」の大きく3つに分類されます。
提唱者の宇沢弘文氏は、これらを国や地域で守っていくこと、市場原理主義に乗せて利益をむさぼる対象にしないことで、人々がより生き生きと暮らせると考えていたのです。
*1 「この分類は必ずしも、網羅的でなく、また排他的でもない」 宇沢弘文(2000)『社会的共通資本』岩波書店,P.5
*2制度資本: 「制度資本は、社会的インフラストラクチャーを制度的な側面から支えるものといってよい。教育、医療制度をはじめ、司法、行政、金融制度、警察、消防などがあげられるが、さらに市場自体もまた制度資本とみなされる。出典:『宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理』日本経済新聞出版本部, P. 53
お役立ち道経営との共通点は、「お役立ち道経営は、経済社会のみならず、社会全体がよりよくなることを目指す」点です。
つまり、「お役立ちに満ちたより良い社会を創る」ことを目指しています。
そんな、「より良い社会」を実現するためには、官民一体となって、そこに住む人びとも巻き込んで、みんなで共創することが必要と考えている。
このように、社会全体がよくなることを目指す、「お役立ち道」と「社会的共通資本」には共通点があると考えられますね。
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