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モラル優先か? 売り上げ優先か?/経営トップの経営判断10カ条【第4話】

コンプライアンスやハラスメント。

企業の不祥事のニュースは後を絶ちません。

業績を上げるためには、モラル遵守は必要なのか?

「モラル無くしてモラール無し」という言葉は本当なのか?

考えていきましょう。    

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※動画の内容と、下のテキストの内容は同じです。

このシリーズは、『不倒不滅を実現する 経営トップの経営判断の基準とは』(株式会社ジェック, 葛西浩平, 2020, Kindle版)をベースに再編集しました。


「モラル無くしてモラール無し」という言葉を聞いたことがありますか?

組織にモラル(倫理や道徳)が無ければ、組織に属するメンバーのモラール(やる気や士気)が上がらないということです。今回はその「モラル」について考えていきましょう。



経営者Cさんの場合-法令遵守の問題山積

2005年の個人情報保護法施行前夜。我が社でも、法の理解や社内制度の整備、社員への教育を進めていました。

その矢先、パソコンの紛失事故が発生しました。パソコンの中にはお客様の重要な情報が沢山入っており、法律の施行前とはいえ、我が社の信用を根底から覆す事故で、お客様にひたすら謝罪をする以外に方法はありませんでした。

ただこれは、氷山の一角にしか過ぎませんでした。

社内の調査を進めていくと、メールの誤送信や顧客名簿の置き忘れ、パソコンを開けたままの離席など、いつ事故が起こってもおかしくない事象が沢山あることがわかりました。

当時、時代的に価値観が成熟されていなかったとはいえ、我が社が、個人情報の取り扱いに関する価値観が低いことにとどまらず、経営幹部も含め多くの社員の中で、モラルそのものが麻痺していたことの表れでした。

事故を起こしたら、信頼回復への道のりは決して楽なものではありません。私自身、個人情報の取り扱いに関しての判断基準が不明確であったことを深く反省したものです。

さらに、個人情報の問題だけではありません。

昨今では、自社の利益やライバル他社とのシェア争いを優先し、顧客や社会貢献をないがしろにした企業のニュースが毎日のように報道をされています。顧客のため、社会課題解決のため、と言いつつ、コンプライアンス違反やハラスメントは必要悪だと、目先の利益を優先してしまう経営者が少なからずいます。

かくいう私も、モラルは大事と思いながら、モラル遵守を厳しくすれば、

  • 業績向上にブレーキがかかるのではないか?
  • やる気のない部下は、ある程度追い込まなければ、やる気がでないのではないか?
  • 「今日の飯」を食べさせるのも経営者の仕事。自社優先になってもしかたないのではないか?

など、業績と天秤にかけてしまい、さまざまな葛藤や疑念との戦いの毎日でした。



解説-モラル遵守か業績か

企業は、何のために存続しているのでしょうか。

ひとことで言えば、「社会に役立つこと」ではないでしょうか。

企業は多くのステークホルダーに支えられ存続しています。それらのステークホルダーから、信頼され選ばれ続ける価値を提供しなければなりません。

ところが残念なことに、「モラルと企業業績は関係ない」「モラルはゆとりのある企業が考えれば良いこと」と考えていると思われる企業も巷に数多くあります。そのような企業は、一時的には業績が上がったとしても⾧続きしないという事実を、経営トップとして再認識する必要があります。

逆に、⾧寿企業と言われる企業は、何よりも信頼やモラルを大切にします。つまりこれは、業績を上げ続ける⾧寿企業の条件の一つでもあるのです。

「モラルか?業績か?」という葛藤が起きるのも、モラルの低下が原因です。モラルの低さが続くと感覚が麻痺して、善悪の判断がつかなくなる怖さがあるのです。

モラルの低下が原因で、大きなミスや事故、お客さまからのクレームが起こる。そして、仲間の心を平気で傷つけたり、皆で一人を傷つけていることに気付かなくなり、モラルハラスメントが横行する。その結果、社員のモラールや士気が低下する。そうなると、市場に提供する価値の質が低下し、最終的には社会からの信頼を失うことになります。

このような悪循環に陥らないために、経営トップとしてモラルの大切さをかみしめ、社員の共通の価値観として醸成をしていきましょう。



経営者Cさんのその後-モラルを高めるための打ち手例

その後、経営トップとして打った手をご紹介します。

問題の原因を、経営トップとしての自分に求め、モラルを高める方向で判断する

現場のモラルの低さを嘆くより、このモラルの低さは私の姿勢そのものだと考えるようにした。社員にモラルの高さを求めるのであれば、自分の言動をニュートラルに振り返る習慣をつけ、「モラル違反に無神経になっていないか」を点検し続けている。

モラルのある人を、幹部として登用する

能力の高さや実績の重視は当然ですが、「仕事や人や組織に対して、正しくありたい、誠実でありたい」という真摯さを、幹部登用の最も重要な判断基準としました。経営をチームでする上で、モラル軽視に陥りがちになった時に、お互い歯止めをかけられるように、常日頃からモラルの重要性を共有し、モノが言い合える風土づくりを行った。

集団のモラル基準に気をつける

モラル感覚の麻痺は、感染症のように伝染するため、「皆がモラルを守っていないから、守らなくても良い」という考え方に陥っていないか、気をつけた。

Yラインを活用して、赦されることと赦されないことを明確にする

Yラインとは、マネジメント上「これは赦されないライン」と認識できる基準のことをいう。「人は条件さえ整えれば働くことが好き」というY理論の人間観に立ち経営を実践する中で、信頼を保つためのラインを決めて共有した。ただし、全てをルールで縛るのではなく、Yラインを設定し考えさせることで、モラル基準を上げていった。

モラルの低い取引先とは取引しない

例えば、約束を守らない、自社の都合しか考えない、いい加減なことをする、隙あらば利用しようとする、個人情報の取り扱いが曖昧、社会課題に向き合っていないといった取引先のこと。このような組織に振り回されると、自社のモラル規準が低下し、結果として誠実なお客様の信頼を失うことになる。

それでもモラルの遵守が揺らぐ事象は後を絶ちません。その時に、例え目先の利益が失われようとも、経営トップが毅然として「NO」と言える強さを持つ必要があると痛感しています。



まとめ-経営トップの判断基準

「モラル遵守が促進されるか」で判断せよ

  • モラル(倫理・道徳)が無ければ、モラール(士気・やる気)は高まらない
  • モラルの基本はお互いの信頼関係にある
  • 組織のモラルが崩れると、結局市場からの信頼を失う
  • 経営トップが襟を正しモラルを遵守する姿勢が、組織のモラルを高める

次回は、「4.批判を恐れず決定しているか」 についてご紹介します。

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