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社員が活躍する条件を整えているか?/経営トップの経営判断10カ条【第3話】

ダグラス・マグレガーが提唱した「Y理論の人間観」。

条件が整えば、人は仕事をするのが好き。

何をどうしようが、人は仕事をするのが嫌い。

あなたは、どちらの人間観で経営をしますか?   

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※動画の内容と、下のテキストの内容は同じです。

このシリーズは、『不倒不滅を実現する 経営トップの経営判断の基準とは』(株式会社ジェック, 葛西浩平, 2020, Kindle版)をベースに再編集しました。


Y理論の人間観

経営トップの多くは、「Y理論の人間観」で従業員を見ようと考えています。

Y理論の人間観とは ダグラス・マグレガー(米経営学者、1948-1954)が提唱したもので、 「人間は生来は働くことが好きなものである」という考え方です。

その対比として「X理論の人間観」があり、「人間は生来働くことが嫌いなものである」という考え方があります。

どちらの人間観に立つかで、従業員の接し方や仕事の与え方が変わってくるものです。

例えば、 X理論で「従業員は働くことが嫌いだから、さぼらないように厳しく管理していこう」と思うより、できることなら Y理論で「社員を信じて任せ、自発的に責任を引き受け、より良い成果を出すための問題解決をして欲しい」と願う経営トップがほとんどなのではないでしょうか。

しかし理想と現実にはギャップがあるようです。



経営者Bさんの場合-理想と現実は違う

Y理論が良いのは理屈ではわかっています。しかし現実は違うのだと感じることが多いです。

例えば、従業員は、言われた仕事は真面目にやるのですが、その仕事で「もっと成果を出そう」「生産性を上げよう」と言っても自発的に動こうとしません。

仕事が好きならば、打ち出した方向に向かって色々とアイデアを出したり、現場の動きを変えてもよさそうなのに、特に何か考えている様子もなく 、私が次の手を打ちだすのを待っているように思えます。

そうすると、私自身が考えて細かく指示を出すか、外部から優秀な人材を確保したり、専門のコンサルタントに依頼をしたりするなどの方法しかありません。しかしそれを続けると、従業員は考えない依存的な傾向がますます強くなってきて、私や一部の幹部の負担が増すばかりです。

責任感も無く、問題解決能力も無く、本当に仕事が好きなのかな? と疑ってしまいます。

Y理論で経営ができれば、それに越したことはありません。

しかし、うちの従業員をみていると、X理論で経営をした方が良いのではないかと思います。



解説-Y理論かX理論か

X理論とY理論

あらためて、ダグラス・マグレガー著、『企業の人間的側面』の、X理論とY理論の記述をご紹介しましょう。

<X理論の考え方>

一 普通の人間は生来仕事がきらいで、なろうことなら仕事はしたくないと思っている(p.38)

二 この仕事はきらいだという人間の特性があるために、たいていの人間は、強制されたり、統制されたり、命令されたり、処罰するぞとおどされたりしなければ、企業目標を達成するためにじゅうぶんな力を出さないものである(pp.38-39)

三 普通の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、あまり野心をもたず、なによりもまず安全を望んでいるものである(p.39)

<Y理論の考え方>

一 仕事で心身を使うのはごくあたりまえのことであり、遊びや休憩の場合と変わりはない(p.54)

二 外から統制したりおどかしたりすることだけが企業目標達成に努力させる手段ではない。人は自分が進んで身を委ねた目標のためには自ら自分にムチ打って働くものである(pp.54-55)

三 献身的に目標達成につくすかどうかは、それを達成して得る報酬次第である(p.55)

四 普通の人間は、条件次第では責任を引き受けるばかりか、自らすすんで責任をとろうとする(p.55)

五 企業内の問題を解決しようと比較的高度の想像力を駆使し、手練をつくし、創意工夫をこらす能力は、たいていの人に備わっているものであり、一部の人だけのものではない(p.55)

六 現代の企業においては、日常、従業員の知的能力はほんの一部しか生かされていない(p.55)

引用:D.マグレガー(1978)『企業の人間的側面(新版)』高橋達男訳, 産業能率短期大学出版部, 新訳24版

あらためて、ポイントをお伝えします。

<X理論>

  • 普通の人間は生来仕事がきらいだ。
  • たいていの人間は強制されたりしなければ企業目標を達成する充分な力を出さない。
  • 命令される方が好きで責任を回避したがる。

<Y理論>

  • 仕事で心身を使うのは遊びや休憩と変わりはない。
  • 自分が進んで身を委ねた目標のためには自ら自分にムチ打って働くもの。
  • 条件次第では責任を引き受けるばかりか自ら進んで責任をとろうとする。
  • 企業内の問題を解決しようとする能力はたいていの人に備わっている。

つまり、人は生来は仕事が好きで、条件次第では、責任を引き受け問題解決能力を発揮するものということなのです。

ここでポイントは、「条件次第」というところです。

条件が整っていなければ、人は仕事が嫌いで、責任も引き受けず、問題解決能力も発揮しないのです。

ではこの条件とは何でしょうか?

Y理論の5つの基本条件

Y理論の5つの基本条件がこちらです。

5つの条件

ポイント

1.リーダーが常にメンバーをYの目で見ていること

美点凝視(お役立ちの意識がある、能力がある、など)

2.高次の欲求が満たされる環境作りがしてあること

自己実現の欲求(やりがい、お役立ちの喜び、など)

3.目標や課題が明確になり、統合されていること

個人と組織のお役立ち使命やビジョンの統合

4.試行錯誤で自由裁量の余地があること

目標と自己統制のマネジメント

5.仕事の主人公の柵が明示され徹底されていること

モラル(倫理)なくしてモラール(やる気)なし

このように、Y理論の人間観に立って経営することを、Y理論経営と言ったりもします。

この中から「2.高次の欲求が満たされる環境作りがしてあること」について少し詳しくご紹介します。

高次の欲求

「高次の欲求」とは、アブラハム・ヘラルド・マズロー(米心理学者、1908-1970)が提唱する「欲求階層説」の中の、「社会的欲求」「自我の欲求」「自己実現の欲求」のことをいいます。

低次の欲求(生理的欲求、安全の欲求)を満たすというのは、例えば、

  • 金銭面
  • 福利厚生
  • 安定雇用

などのことを言います。

高次の欲求(社会的欲求、自我の欲求、自己実現の欲求)を満たすというのは、例えば、

  • 組織の一員として認められる
  • 褒められる
  • やりがいを感じる
  • 自分のお役立ちビジョンを実現する

などのことを言います。

高次の欲求を満たす条件とは

欲求を満たすための条件といえば、給与を上げる、報奨金を出すなど、金銭面に目が行きがちですが、やりがいや、従業員一人ひとりのお役立ちビジョンの実現をサポートするしくみなども重要なのです。

このように、これらの条件を整備して、従業員の潜在的な能力を引き出し、仕事のやりがいを創造することこそ、経営トップの役割であり責任なのですが、Y理論経営がうまくいかない組織は、高次の欲求を満たす条件整備を実施していないケースが多いのではないかと思われます。



経営者Bさんのその後

「条件を整える」ということを正直あまりやってこず、単に「Y理論=性善説」「X理論=性悪説」としてとらえていたように思います。何より私自身が、「X理論の人間観」で従業員を見ていたため、従業員の信頼は地に落ちていたのだと気づきました。

そこで、私自身の変革宣言とともに、Y理論経営を徹底することを宣言し、経営幹部からミドルマネジャーまでの育成に力を入れ、組織文化を「欠点凝視」から「美点凝視」に変えるようにしました。

そして、社員のスキルアップを図る制度や、経営に参画させるしくみも整えました。

そして従業員には、「お役立ちイメージ」を作ってもらって、この組織を通じてどんな自己実現をしたいかを考えてもらう機会を設けるようにしました。

当初、従業員からは「何をいまさら?」という反応でしたが、数年かけてようやくお互いの良いところを見つめ合い、協力をして知恵を出し合う、という組織文化に変わってきました。

これからも道のりは⾧いと思いますが、この変化を信じてY理論経営を続けていきます。



まとめ-経営トップの判断基準

「Y理論の経営」で判断せよ

経営の基本は、個人と組織の可能性を信じることから始まる。

個人は、自分のお役立ちビジョンを描き実現する力を持っている。

組織は、個人の可能性を引き出し、組織のシナジーを発揮して、個人ではできない非凡なことを成し遂げることができる。

Y理論の人間観すなわち「働くことが好き」「問題解決ができる創造性がある」「主体的に責任を持つ」などを前提にして個人や組織をみて条件を整えることが経営トップの役割である。

次回は、「3.モラル遵守が促進されるか」についてご紹介します。

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